『読売新聞』 2006年(平成18年)8月9日
仕事と人生
「豊かさ再発見」
技術者である限り、より良いレンズを作る挑戦を続けたい
「ただの筒に見えますが、中には8枚のレンズが入っています。」一眼レフカメラのレンズ部分を指さして、こう説明する。
光はレンズを通過すると、曲がったり、広がったりするから、凸レンズと凹レンズを並べ、自然な光の状態に戻す。そのレンズの組み合わせを考え、設計するのが仕事だ。今は主に、携帯電話の基板などの製造に欠かせない産業用レンズの設計を手がけている。
常に求められるのは、「1b先の板に100分の1_の光の点を正確に映すこと」。レンズのカーブや厚みなどのデータをパソコンに打ち込み、計算する。わずかな値の変化で、光の状態が大きく変わる。思い通りの組み合わせが出来るまでに、1か月以上かかることもある。
出来上がった時の満足感は、何とも言えない。「暗闇の中、ようやく頂上にたどり着いた登山家の気分でしょうか」
9歳の時、天体望遠鏡で見た星の美しさに感動したのが、レンズとの出会い。大学卒業後、半導体機器メーカーに入ったが、設計者だけでも50人もいる大企業で、命じられるだけの仕事が次第に嫌になった。「最初から最後まで自分で考えて仕事がしたい」。40歳で独立し、東京都三鷹市に「レンズ屋」を創業した。
大量生産はしない姿勢を貫いている。一つひとつの品質にこだわりたいからだ。それが、「レンズの魔力に取りつかれた」技術者の責任だと信じている。(本田克樹)
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レンズ設計 永田信一(ながた しんいち) 49
