レンズ屋企業情報

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会社案内『EAST』 第11巻4号 平成16年4月1日

匠の肖像 第64回 
永田信一  東京都三鷹市  「レンズ」

 

EAST

信念を貫く真っ直ぐな眼差し

永田信一さんがレンズに興味を持ち始めたのは、小学生のときだった。雑誌の付録に、天体望遠鏡の簡単なキットがあり、それを組み立てて夜空をのぞいた経験が、永田さんに強烈なインパクトをもたらしたのだ。

「自作の望遠鏡で星を見ると、真っ青に光っていたんです。肉眼で見ると星は銀色ですよね。『本当は青いんだ』と驚き、感動したのを、鮮明に覚えています」

実は、星が青く光ったのは、自作の望遠鏡の精度が低かったせいであり、実際に青く光っているわけではない。しかし、この出来事が、永田さんを星とレンズの世界に誘った。

実際、就職先を決めるとき、永田さんは、レンズの世界に身を投じたいと考え、工業用カメラを作る会社に就職する。しかし、この会社は、レンズの設計製作をせず、もっぱら外部の光学機器メーカーから買い付けていた。社内でレンズを設計しなければ、すばらしい装置は生み出せないと考えた永田さんは、三年間にわたって猛勉強し、レンズ設計の理論を頭に叩き込んだ。さらに、ニコンでレンズ設計に長年携わった名人が定年退職した後、永田さんがいた会社に技術顧問として招かれたのを機に、指導を受けた。

十三年の勤務を経たとき、永田さんの人生に大きな転機が訪れた。離婚したのだ。永田さんは、定年まで勤めるつもりだったが、これを機会に独立を考えた。とはいえ、研究一筋だったため、会社の経営なども見当もつかない。そこで、ひとまず、知り合いの設計を行う小さな会社に身を置くことに決めた。

「独立できないようだったらずっとお世話になり、確信が持てたならば二年で独立させてほしいとお願いしたところ、そこの社長が快諾してくれたんです」

そこでは、営業をはじめ、顧客とのやりとり、注文の受け方、経理など、さまざまな実務を経験し、身につけた。そして、二年後、オーダーメイドのレンズメーカー「レンズ屋」を設立した。

当初は、自宅で仕事をしていたが、どうしても気持ちにゆるみが出てしまう。あるとき、三鷹市がSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)のパイロットオフィスを開設するというニュースを聞き、入居すると、その隣人は、ホームページ製作者だった。

「その人に、レンズ屋のホームページを立ち上げることを相談すると、ホームページを何回も見てもらうには、お客さんの役に立つ情報を多く載せないといけないという。そこで、レンズ設計の技術情報を載せたところ、ページビューが飛躍的に増えたんです」

実際、「レンズ屋」のホームページでは、開設以来、インターネットを通じた製作依頼が後を断たず、初年度にわずか七百万円だった年商は、翌年二千万円、さらに翌年六千万円と、三倍ずつのペースで伸長した。

注文のほとんどは、メーカーからの依頼だ。しかし永田さんは、これ以上事業を拡大するつもりはないという。あくまでも製品の質にこだわり、自らのキャパシティーを超えることをよしとしないからだ。

レンズの設計では、凸レンズと凹レンズを何枚組み合わせ、それぞれのカーブをどのように設定して、依頼主の求める像を実現するかが、永田さんの腕の見せ所になる。収めるレンズは、枚数が少なく、径が小さいほど、製品の価値は安くなるが、それは同時に、設計の難易度が飛躍的に上がることを意味する。求める像が、何枚のレンズによって得られるか、どのようなレンズを使うかは、組み合わせを試してみるしか方法がない。

「この製品は、七枚のレンズを組み合わせてつくっています。もしかすると六枚でも同じ性能が得られるかもしれない。しかし、それは、だれにもわからないんです」

レンズの設計は、試行錯誤の繰り返しと、自分への納得のし具合だと、永田さんは言う。

設計を終えると、それをもとに、レンズや金枠などの製作を依頼する。製品になると、部分点数は数十点になるが、要になるレンズに限らず、一つでも本来の設計と違うと、出てきた像は意図したものとは異なってしまう。しかし、製品として組み立ててしまうと、どこに原因があるかはわからない。すべての部品が設計通りにつくられ、完璧に機能する事で、初めて求めた像が得られるのだ。永田さんが依頼しているレンズ職人は、研磨の技能が名人級だが、それでも最初に像を投影するときは、今でも緊張するという。

「光は、人間に目がある限り、興味のある分野です。その光を扱うためには、必ずレンズが必要です。だから、レンズはこれからもずっと人間の友であり続けるでしょうね」

永田さんの目線は常に真っ直ぐ、上を向いているのだ。

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今までレンズを使っていなかった機械メーカーや電機メーカーなどが、
レーザーやCCDなどを使う機会が増えたことから、レンズを求めている。
「光を使うと必ずレンズが必要なんですね。ですから、
レンズの需要は世の中に強くあるわけなんです」と、永田さんはいう。